流れるひと/恋月 ぴの
 
あなたによく似たひとだった

人違いと戸惑うわたしの顔を覗き込み
どうかしたのと気遣ってくれた

これを落としたひとをずっと探しているのと
あなたの落しものを目の前に差し出した

そのひとは、押しいただくようにそれを手に取り
あちこちから眺めてみたり
夕日にかざしてみたり
うんうんと頷きそっと耳に当てた

とても懐かしい音が聴こえる
大切なものだよね
そのひとに必ず逢えることを祈っているよ

ふと目頭熱くなってしまって
流れる涙を拭うわたしの肩に手を添え慰めてくれた

わたし本当にあなたを探しているのだろうか
探す振りをしているだけかもしれないし
この掌の中のもの
確かにあなたの落しものだったのか
いつもあなたはわたしの傍にいてくれるのに
認めたくないだけなのかもしれない

夕日に染まり去っていく後ろ姿を見送りながら
わたしそんなこと見透かされてしまった気がして

ひとり旅をすることの
続けていくことの難しさみたいなものを知る


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