やさしみ/相田 九龍
やさしみ
が
からだのぜんぶ
浸していました
とりが
飛んでいって
だれかが
声をあげました
そのとき
わたしは
比喩としての
血だまり
の、なかに
たっていました
それを
まわりのひとに
うまく言うことが
できませんでした
やさしみ
が
からだのぜんぶ
浸すとき
わたしはずっと
比喩としての
血だまり
の、なかに
たっていました
やさしみ
が
こころまで浸すとき
言葉がとぎれると
わたしは
比喩としての
血を、
吐きました
それを
まわりのひとに言うことができませんでした
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