詩集『月光苑』大原鮎美/渡 ひろこ
 
上に/グラマラスな月がでる
 
 ついアダムとイブの禁断の果実を連想しがちだが、それよりもふと、寺山修司が脳裏に浮かんだ。
彼が描く幻想的官能的で且つ、シュールな映像を切り取ったようでもある。
その断片が言葉と化して読み手の足を止め、その奥へと引き込むように手招きするようだ。
 そうして翻弄されながら短編を渡っていくうちに、この「月光苑」の主である作者大原鮎美さんが、苑の奥深く棲んでいるのに気づくのである。
本書あとがきでも「わたしにとって「月光苑」は非常に居心地がいい」と述べている。
この「月光苑」は作者にとっては150の部屋を持つ王宮のようなものかもしれない。
これからもどんな作品が展開されるのか、大原鮎美さんの「月光苑」に招かれるのが今から楽しみである。




                      
「詩と思想」7月号掲載

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