手のひらから/木立 悟
 





言葉に割れる岩道の
ひとつひとつがまたたき並び
空の底へと落ちてゆく
出せずに裂いた手紙のように


曇のほとり
ひとり祈り
この手を焼く火が
この手のみであれ


崖の上から
海が空へ消えるのを見る
それでも
子らの手より小さい


けだものの口から血を受けとり
土にふたつの道を描く
髪の毛ほどの
枯れ蔦ほどの


火はさらに白く消してゆく
多くの手を
からだを
さらにさらに多くの手を


降りつむものを読むたびに
それは目の前に現われる
重なりにじみ 道を狭くし
しきりに雨を着せたがる


右腕から縦に
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