街の灯/カナシミルク
 
窓を開けると部屋に入り込む夜の冷気
あぁ、もう秋だ
日毎に高まる焦燥と新鮮な倦怠を更新して
静かに沈没していく街の灯

眩しさ。もう生まれることのない昨日の眩しさが生きたのか
透明な漂流物は渦になってわたしの目に吸い込まれていく
そう、かすかな鎮魂の期待を殺したのはわたしだった

重力に逆らうように、遠くの方へ
わたしの視線は絶えず伸びていく

その先ですれ違っていく片腕のない男、痣のある女
その肉の蹲りから垂れ下がる柔らかな脂肪の塊を
硬直させることもできないまま過ぎていく風の如き涼しさよ
あるいは、その張り付いて離れない刻印を
冷やすこともなきまま纏わりつく炎の
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