死に包まれた生き物のように/なかがわひろか
 
どこに書いても踏み荒らされてしまうから
自分の腕に刻み込んだ「LIVE」
ムラサキの血が青白く細固い腕をなぞるように落ちる
地面に落ちた血がどこかの世界の地図を描く
地が血を飲む音が聞こえる
ゴクリゴクリと
君が逃げる世界の入り口は
消えてしまった
もう体中どこにもスペースが無くなるほど
刻まれた「LIVE」
いくら上手に刻んでも
鏡に映った文字はうまくは読めないだろう
足りなくなったらいつでもおいでよ
僕の腕を貸してあげる
少し君より大きなこの体は
生まれてからずっとずっと
誰にも触れさせずきれいにきれいにとってあるから
そして真正面から声に出して
汚い言葉を吐き散らかしたその声を使って
何度も何度も読み上げればいいさ
「LIVE」「LIVE」と
誰にも愛されない死に包まれた生き物のように
「LIVE」「LIVE」と
鳴けばいいよ

(「死に包まれた生き物のように」)
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