はいどあんどしーく/吉田ぐんじょう
 



昔から
隅に居るような子供だったので
かくれんぼでは
何時も鬼をやらされた
両腕で眼を覆って
だけど
じゅう数えるまでは
どうしても待てない

いち、に、もういいかい

すぐ振り返ってしまう
隠れきれていない友達が
そこに居ると安心した

ちゃんとやってくんないと
かくれられないじゃん
友達は
憤慨したように言った

だけど
隠れてくれなくていいのだ
眼の前から
消えてしまわないでほしいのだ
もういいかい、と振り返って
誰もいなくて
木々が風に揺れているだけとか
そんな光景が
眼前に広がっていると
慄然とする
世界が
終わってしまったんじゃないかと

隠れるのも下手だった
狭いところで
息を殺しているだけで
おそろしくなってくる
みいつけた
と友達ではない
誰か知らない人が来たら厭だ
そんなことを考えているうちに
つい
ここにいるよ
と叫んでしまう

今でも
わたしはかくれんぼができない
夜中の台所でゆっくり数を数えてみるが
やっぱり
じゅう数えるまでは
どうしても待てない

もういいかい
呟いてみると
もういいよ
と誰かが
答えたような気がした
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