そよめきと鳴る窓は君の外に/青木龍一郎
 
何も無い畳の部屋、僕は全裸で寝転んでいた。
赤ちゃんみたいに手足をぎゅっと身体に寄せて、じっと天井を眺めていた。
四日間飲まず喰わずの僕の頭の中にはオペラが大音量で流れていた。

部屋のふすまがすっと開き、誰かが入ってきた。
坂東英二だった。


「あのー、体ガリガリやないか君。何してんねん、おい」
「坂東さん…申し訳ないです…」
「申し訳ないことあらへんよ。でもねー君ねーあれやで
 人間って喰わんと死ぬねんでぇー」
「…」
「今、あいにく、ゆでたばぼ持ってへんのですわー
 全部、喰ってしもたわー。どないしよー」
「…体が寒いです。坂東さん」
「そりゃーそーや、君、
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