Mtume Venus/たりぽん(大理 奔)
 
影に追われながら月を追います
切り絵のような林の向こう
夜空の手鏡に手をのばし
まぶしさの向こうに空蝉をさがすと
指先にしがみつき
掴み取るとカサカサと砕ける
乾いた血のような残照の地平で
野良がノラのまま薄汚れて
鳴いていて
けして白鷺にはなれないから
そらはどこまでも
遠いとおいままなのです

 渡り鳥が縫っていく
 夜が生まれる狭間に
 住んでいるのは金星です

  誰も連れて行ってはくれません
  切符も売ってはいませんでした
  最終の気動車が甲高く鳴いて
  短い曲率を右に曲がっていきます
  影を追うようにして
  月に背を向ける逃亡者のよ
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