胎児は濡れていることを否定しない/瓜田タカヤ
 
絶えず不自然なコイルのように
終始が連結されている紫煙は母乳から吹き出している

おばあちゃんの皮膚のような
破裂したビーチボールは
闇のなか微かに縁取られガサガサと呻いている

夜中海から上がって来た女はハダカで
海藻にまみれている
表情は長髪を掻き上げないので
知れない
映画の練習なのだ
海沿いの夜店の海沿いで
四歳の時に
それを見た

食用の肉 腐敗した雑巾 構成の沿い
呪術的にぬくい水滴 波間で真冬の闇を呼吸する死海の綿 唾液海
おぼろげにたたずむ 鉄の長椅子に 染み込む 僅かな存在 
唾液の海流で吐き出された鍵づめは私の内部で
腐食せず大量にわいている

遙か彼方に
存在するであろう都市の蜃気楼を見た悪寒を
死ぬほど蹴り 無視し 太股の内側だけを
いつまでも舐める

唾液として生きる

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