ラブストーリー/仲本いすら
先人の魔法はもう解けてしまう。
耳を塞ぐことも部屋に籠ることもせずに
銀河系で唯一僕でありたい。
割れてしまった心の片割れは
少しばかり軽くなって
今も僕を乗せる準備をしている。
*
成田までの道のりで
僕は席をゆずった
立ち上がった場所から見える窓には
大人しくなってしまった古代都市の幻影が
長方形に切り取られていて
僕は背中越しに
彼方のラブストーリーを考える。
*
先人の魔法はもう解けてしまう。
僕らが何も考えずに
生命を感じる時代は
きっともう二度と無い
最後の一言から
とてつもない時間
ひとりぼっちにさせてしまった。
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