花の通天/捨て彦
 
新世界の入り口の門は
歌舞伎町にも負けんくらいの
色とりどりの電球で埋め尽くされとって
作りもんの花やら枝やら
そりゃもう
朝でも夜でもぎんぎらぎんぎら
通天近づくに連れてだんだん
賑やかな人の声が聞こえてきよる



うおおーい うおおーい
街に入れば
そこは幽玄な街並み
ほやけど道端は
芋洗ろたみたいな人の群れ群れ群れ
どんぶりひっくり返したような雑踏と熱気で
おれはほんまにめまい起こしそう
こっち見たらバナナの叩き売りしてる
向こうでは蝦蟇の油の実演や
お前ら騙されたらあかんぞー
大声で叫んでも
野次馬のべしゃりですぐにかき消されてまう



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