傀儡使い師たち/走れちゃぶ台/海里
 
風呂桶が出奔したと聞いて
ちゃぶ台は激怒した
呆れた桶だ
生かしてオケぬ

走り出したちゃぶ台
四つ足だということもあり
その気になれば俊足だ

色々なものが乗せられていたが
何しろうちのちゃぶ台ではない
走り出した瞬間なだれ落ちたことでもあり
ここではその描写はしない

ダリの描く象たちみたいに
地平線を限りなく前倒しになりながら
いつのまにか寄り集い
群れをなすに到ったちゃぶ台たち

残り湯をたたえたまま
滑るように
橇のように
前方を疾駆しているはずの桶を追っている

オルフェ、ちゃぶ台のアルファとオメガよ
私は事情をこう想像する
風呂桶は守るべき金魚と出会ったのだ
無事追いついた暁には
君たちは金魚ごと桶を守ってやってくれ

風呂桶のほうとしても
降りかかるちゃぶ台は払わなければなるまいが
君たちにも
彼らにも
事情と理由があってのことなのだから
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