アポカテラロ 水の箱/人 さわこ
ことや」
擦れた新聞紙の燃える音は学校中に響いた。
昔から止まっていた感覚。立ち止まったまま、見えなくなったもう1人。ときどき、どうしようもなく会いたくなるもう1人。林の中、目を瞑って走ったまま、消えてしまいそうだった、殺してしまいたかった。
1人は影といった。
貧しい生活から開放してくれた1人を、影といった。学校の裏の林に出る、怖い怖い妖怪。みんながうわさしていた、一つ目のおっかない顔した妖怪。私だけと目が合った影。どうしても向こうに行きたかった。空の暗い雨の後。林を抜けたら、会える。
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