アポカテラロ 水の箱/人 さわこ
 
打点の高い告白は、そのまま私の心になった。

「わすれるもんかいな」

叔母は笑っていた。
庭先には叔母の植えた抱えきれないくらいの花が。牡千幸のむせるような香り。柿の木。知ってる。夏休みがあっという間に終わって、瓦の罅にお願い事をしたこの両手は、本当はどこか遠い星の生命体のくだらない閃きだったのかもしれない。ずっとそんな事を思っていたけれど、小さな道に墳つほんの小さな小さな馬鹿の山。誰がつくったのか。小さな道が消えた果ての大きな大きな馬鹿の穴、誰が掘ったのか。もうずっと出られなかったんだな。

「約束を聞きにきました」
「わすれるもんかいな」
「思い出せないんだ」
「昔のこと
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