集中豪雨/ホロウ・シカエルボク
 

灯りを落としたベーカリー・ストアーに
ささやかな毎日のぬくもりは見当たらず
トチ狂った無灯火の原付が
点滅信号を強引に駆け抜けていく、その飛沫が
誰かの傷を裂いてるみたいに見えた
かなしいなんて言うな
俺たちはやれるだけのことはやってきたんだから
まだ頬がふくよかな頃の
ミックジャガーを真似してそう言ってみたけれど

やつほどにうまく、声は濁らなかった

総合病院が近いこのあたりじゃ
ひっきりなしに救急車が駆け抜ける
雨の中にひかる赤を見るたび
お前は胸の前で手のひらをかたく握った
「悲鳴みたいに聞こえていやだ」と
むかし話したサイ
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