ゆりかご/千波 一也
 


この手が
届かずにおわった物事ほど
忘れがたいのは
なぜだろう

それゆえか
届いたつもりの物事さえも
本当は
届いてなど
いなかったのではないか、と
思えてしまう

本当、の
意味するところを
解せないまま
夢の
歩道の
険しくなるさまに
ふと
立ち止まり



日々を吹きわたる風は
敵ではないし
味方でも
ない

たとえば
このからだが
眠りを必要とするように
自然な
起点の方角へ
風は
月日を
吹きわたるもの

そうして夢は
はざまに
灯る

始まりも
終わりも
知れず
夢は
はざまに
灯る
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