緑のT-TOP/たもつ
 
顔が見えなくて良かった
それでも親方の変なところにある黒子を思い出して
ついつい笑ってしまうのだけど
乙女の純情みたい
という言葉で恥ずかしがったのは僕ではなく
親方の方でしたね

お日柄のよろしい一日の終わりを告げる音楽が流れ
扉や窓が閉じられる時刻となりました
親方がふすまを開けると光が目に痛くて
かくれんぼの終わりを知らなかったのは僕だけでした
知らないことは知らなかったという事実に気づいた後で
いつもそのことに小さく鳴いてしまう
親方はゆっくりとスポーツカーに近づいていきます
やはりまだ僕には乗れません
親方、そこから僕の姿が見えますか
決して振り返りもしないで





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