緑のT-TOP/たもつ
本日はお日柄もよろしく
押入れの中は相変わらずのじめじめ模様が続きます
いつまでこの暗闇の中でかくれんぼをしなければならないのか
親方にも僕にもよくわかりません
ただ、かび臭い布団や枕に囲まれたり包まれたりしていると
親方の英語の発音もいつもより透きとおっている気がして
どうやら自分が鬼であることを忘れておられるようです
親方はカンナの使い方もピアノの弾き方も教えてくれませんが
親方、数えてください、と言うと
いち、にい、さん
親方は定理の説明を中断して
暗闇に溶けていくようにゆっくり数え始めます
きっと親方の唇は正確に動いているのでしょう
僕には無理なことだ
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