蛙の亡骸 /服部 剛
夏の夜風にあたろうと
歩いたいつもの道影に
黒い塊(かたまり)が、ひとつ。
四つん這いの蛙はぢっと
夜闇を、睨みつけていた
翌朝歩いた同(おんな)じ場所に
四つん這いの姿のまんま
蛙は引っくり返っていた
( 脳の一部がこめかみから
蕩(とろ)けて零れ落ちていた・・・ )
思わずしゃがんで見る僕に
細い瞳は薄ら哂(わら)いさえ浮かべ
降り注(そそ)ぐ朝の光を
ましろい腹にじりじり浴びていた
ふたたび駅へと歩いていって
遠のいてから、振り返る。
蛙の小さい黒点は
何故だかずっと
空に向かって、万歳をしていた
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