山に地面の/番田
考えながら誰に会うこともなく
咳でふせこんでいると
遠くには「野火焼き山」という名の山があり
「深谷」という名前の海があった
*
遠くに昇っているのが見えた
月が
遠くに沈む
夕日を見ていた
奴隷のようだが
誰かに会えるだろうと
僕は誰の声もないままに歩いていく
どこまでも寂しい限りだ
青と群青色の幽霊が出るという
ウミウシが
死んだ黒い体を引きずっている
人生だけは
続いていくみたいだな
向こうにそんなものを見ていた
そこには
死体がたくさん埋まっていて
もがき苦しむ様子が浮かんだ
木で作った
ベッドに入り
声も出さずに
なにもすることもなかった
*
何十年も前に
周囲の家を焼き尽くしたという
近くには
蛙がいて
モヤリと乗っていた
父のことを
ザンブザンブと思い出した
ポケットには
一輪のコスモスが
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