風鈴売りの街/瓜田タカヤ
 

肌寒い昼間が終わり
夕焼けも暗い射影に頭ごと押さえつけられるころ
人通りもまばらな繁華街のシャッターは
項垂れた音を鳴らす

子供の落書きに慰められた冷えかかる歩道の先まで
幾つかの藍やオレンジや乳白色らのビードロは破壊されていて
アーケード街はそういった不確実な瞬間の破片で埋め尽くされる

時々いななく何処かの人妻の
パンティーは突き破られていて
それが美しい音源である事に
諦めと安堵の両端で衝撃を受ける

シャッター内の恋人は皆
0秒後の世界さえ
途方もなく飾り付ける

呪術師の不自然な仕草は
黒煙を自在に操作し
プリズム越しの昆虫は
言葉を脳へと
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