夏休み/あ。
 
出したように揺らす


まだ冷房がきいているスーパーマーケットで
昨夜切れてしまった醤油をかごに入れる
ついでに濃い紫がつやつやとした種無し葡萄も


重くなったペダルをこいで橋を渡り
今度は引っかからなかった踏切を越える
帰り道はのぼり坂に変わり
さらにペダルは重くなる
よいしょだなんて老けた独り言を呟き
ふうふうと坂をのぼりきる


振り返れば溶けてしまいそうな橙の夕焼け
気の早い鈴虫の声がどこかから聞こえてくる
額にうっすらと浮いた汗だけが
夏の残したひとしずくの忘れ物のようで


もう夏休みは終わったのだと知った
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