夏休み/あ。
あんなに耳障りだった蝉の声も
虫眼鏡で集めたみたいな痛い陽射しも
まるで色あせ始めた遠い物語
なだらかな坂道を自転車でおりると
向かい風がほんのわずかの後れ毛を揺らす
時折小石が顔を見せている素朴な道は
タイヤが通るたびにわたしのお尻を持ち上げる
踏切の遮断機がゆっくりと閉まっていき
坂道でついた勢いはブレーキで止められてしまう
滅多に閉まることがない代わりに
一旦閉まるとなかなか開かないこの踏切は
別段せっかちではないわたしも待ちくたびれる
やっと開いた踏切を越えて橋を渡る
川から吹いてくる強い風がわたしを迎え
さっきより増えた後れ毛を思い出し
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