グアニンの思い出。/ジャイコ
干からびた夜空に、わたしの喉は辛く蠢いて。
どうにも君に見せたい星が見つけられずに困っています。
ほら、やっぱりあの日に流れ落ちてしまったのではないかな。
彼女の黒い髪と共に海に流してしまった君の眼窩は、
未だわたしの胃の内側にへばり付いていて消化できていないのです。
手のひらを見つめていればきっとそこはなないろの海の向こう。
そこには君と彼女がふたり肩を並べて私を待っている気配が漂っています。
どうしてこんなにも整然と並んでいるのでしょうね、
アデニンはチミンと、グアニンはシトシンとしか手を繋がないのに。
きっと世界はそうやってぐるぐる交わっているのでしょう。
夜が更けてしまうと、
愛についてのいろいろを見失ってしまいそうになります。
わたしの足元はきっと4つの塩基配列で成り立っていて、
きみから貰った星を入れておくための籠も、それで編んだものだといいのに。
手のひらを閉じ込めてしまえばきっとそれは誰かのたまご。
そこには君と彼女がふたり背を向けて私を海に流そうとしているのですよね。
ヌクレオチドがわたしの母だったとしても。
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