わたしたち三兄妹/吉田ぐんじょう
 

幼いころ
妹はお風呂が嫌いで
兄は爪を切られるのが嫌いで
わたしは歯を磨くのが嫌いだった
だからそのころのわたしたち三兄弟ときたら
妹は髪から極彩色のきのこを生やし
わたしはのどの奥に
蝶々をいちわ飼っていたために滅多に喋らず
兄は癇癪を起しては長い爪でそこいらを切り裂いた

一葉だけ残っている
あのころの
三人並んで撮った粒子の荒いカラー写真の中では
わたしたちは手をつないで
こわいものなしの小人たちみたいに笑っている

いっそのこと
あのまま三人で森へ行ってしまっていれば
子供のままで
永遠に生きられたかもしれなかった


わたしたち三兄妹は
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