自由詩な葉っぱ録/束の間の緑/海里
 
孫生(ひこば)えを育てている
木を植える男たちが植えた木は大きくなって
全てまた切り倒されてしまったので

孫生えの世話をしている
伸びすぎるとまた伐られてしまうので
折々に切りつめるのが主な仕事だ

木を植える男たちは
植えたあとは何処かへ行ってしまった
木を植える男になりたい男たちはいつでもいるが
将来は将来はと言ってばかりで始まらない

果樹や大樹の苗木でなくても
料理に使った野菜のタネ一つでも
地面を探して播いてみればいいのにね

なんのえぐみも
アルカロイドも持たない柔らかな双葉は
あっというまに
虫たちに食われて終わるだろう
ひととき生まれた緑
ひととき養われた命

それでいいのにね

世界樹も宇宙樹も望まない
森も花園も
一木と呼べるほどの一本の木でさえも

束の間であろうと
その束の間の緑を
今ここにある孫生えを守っている
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