『言語』/東雲 李葉
私にはあなたを止める言葉がない。
けれど差し伸べた手は決して嘘を吐かないから、
どうかどうか信じてほしい。例え私の命を奪っても、
そんなこと構わないから。ただ、あなただけは生きて、笑って。
私の知らない言語で話さないで。
それはそちらの言い分であって私の思想とは関係ない。
お願いだから観念して。一度決めたら簡単には崩させない。
甘い薬を飲まないで。あなたがもっと遠く遠くに。
青い私を笑わないで。幸せそうに私を見ないで。
もう何も言わないで。だけれどこの手を握っていて。
夏の名残を感じる夜にあなたは笑って冷たくなった。
私はずっとあなたの手を離さなかった。
朝が来て、人々が私の掌をあなたから引き剥がし、
私は初めてあなたの言葉が通じた気がした。
戻る 編 削 Point(0)