懐古巡りて/中原 那由多
暖簾靡いて
初秋を告げる
静寂の下
淡い酸味を懐かしむ
この青空はあの日と変わらず
期待を寄せてチャイム待つ
理由もないまま急ぎ足
畦道の花が愛おしい
掌ほどの綻び
ふふふ、と幸せ
小さなざわめきの中
紛れるふりして何探す
他愛もない時間
もう少し欲張ってみようかな
ずっと向き合っていけるなら
じゃれあう子猫のように
満たされていることに
これ以上何も言えない
哀愁と微睡む
パステルカラーで思い描いたのは
何気ない日常だった
夕闇に歌えよカタン、コトン
風見鶏と目があって
烏と一緒に苦笑い
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