風を切って/番田 
 
誰も知らない街の中を歩いていく
暗闇の中では銃の光だけがやけにまぶしい
黒いバッグの中には一冊の聖書が入っていた



ただ分厚いだけの何も語らない聖書
何もかもが嫌になったときでも

黄金のすべてを抱く月
だれの言葉もないほど
手袋はもう買った時の匂いはなかった

アイポッドにはいくつかの名曲だ
いつもそれを耳に当てている
そして耳当てはとても高価なものを使っている
黒ずんだコートだけが不気味に赤かった

真っ黒な君はそれを聞くだろう
そういうものがあれば幸せだろう
キラキラに黒ずんでいるわけではなかった
スニーカーには汚れが満載だ



そんなふうに君に俺は疲れていた
黄色くて黄味みたいに見えた
群青色の夜闇に月がひとつ
奴隷の縄も怪しく光り輝くのだ


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