腐蝕の林檎/中原 那由多
 
傷つけようとする者は
傷つくことを何より恐れる
ガラスの剣の鋭利さに惚れ
ずっと捨てられないままに握っている

だから貴女は笑えばいい
馬鹿と、馬鹿と


運命に身を委ねると言えば格好付くだろうか
いつか出逢えるとほうき星
夜空見つめて朝を待つ
あれはいつのことだったのか

嗚呼貴女は毒せばいい
愚図と、愚図と、


黒髪に翻弄されたら
どうあるべきか忘れてしまう
眼球も吐息さえも
愛執の血潮に立ち眩みながら
ただ一つだけに飢えている


ただ欲しいままに掴もうとする掌は
白く小さな羽根にさえ容赦ない
何もかも奪い取ってやりたくて
破滅を避けるためには仕方なく
夢を赤裸々にした



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