真夜中の暴走/伊那 果
 
 闇の中に
 孤独の地鳴りが
 今日もまた
 聞こえてきた

 耳をつんざく爆音は
 彼の抱えるやるせなさ
 時代遅れの刺繍や
 漢字だらけのでたらめな愛情表現
 通り抜けていく風は
 そんなに何かを変えるかい?

 思春期のころ
 私は走れはしなかった
 孤独の地鳴りを
 心の中で鳴らし続けた

 孤独の地鳴りは
 せっかく寝付いた人を起こし
 不眠症の女は寝返りを打った

 人とのつながりなど
 はじめから虚構だが
 隣に眠るあなたの手のぬくもりが
 寝苦しい暑い夜でも
 ほしい

 欲したものを振り切るための風なのかい?

 地響きのような孤独が鳴り響いて、
 街は夜に包まれる。
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