夜 朝 夜/木立 悟
 





半月と曇
松明と子
大木の陰
鈴の音の色


ふたつのしずく 川岸の
あちらとこちら 同時に落ちる
ふたつの油
ふたつのむらさき


鏡ばかりがまぶしい暮れに
腕が痛み 鳴り響く
霧が水に消える音
ふたつの過去にはさまれた道


迷い舟と曇
夜の鳥
一羽はばたき
かつて鳥だった光を聴く


指の岩が
からだじゅうの胸を突く
ごつごつとした
苦しみの無い苦しみ


水も鉄も錆び
だが色に満ち
絵の具の香に満ち
偽りに満ちる


光がついえ
また栄える
ひとつずつ現われ
もどかしく笑む


手のひらに咲く手のひらを
やわらかな毛の手のひらが摘む
海に
植えるのだと言う


風の強い暮れがあり
灰のままに夜を引く
冷たいふちどり
鈴の音に降る


朝になり また夜になる
手のひらの光
むずがゆく
砂に灯る























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