昨日のリタ/ホロウ・シカエルボク
ろで俺は指を止めてレストランの広告を指さした
「ほら、ここ」
女はあまり興味がなさそうに俺の右肩越しに電話帳を覗きこんだ
「店の裏でニワトリを絞めて出してる、だから凄く味がいい」
ん、と彼女は喉の奥で音を出しながら眉を寄せた
「殺したてが美味しいなんて嫌な話ね」
もうたくさんと言うように首を振って見せる
だけどそれは彼女なりの
会話の発展に向けての演出のように俺には見えた
犠牲の概念が欠落したものには、と俺は話を続けた
「本当の深みというのは感じられないものさ」
女は目を丸くしてワーオという表情を作ったあと
リタと名乗りながら右腕を差し出した
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