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石黒
悲しみは
始発前に
環線を滑ってゆく
車たちや
過ぎてゆく信号の
きらびやかに
明け方の眠たさも
まぶしさも
知らない
縞馬の
しじまも
魚たちの
沈黙もまた
明け方の憂鬱を
夢見ながら
まだ
口を開こうとしない
この夜
明日の夜よ
住所も
連絡先も持たない
お前たち、
夜を、
どのタクシーに乗せて
どこに帰ればいい
お前たちはまだ
明け方の喧騒も
喜びも
知らない
移り変わる
季節のことも
庭の紫陽花のことも
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