黒生石の光を座って/番田 
 
逃げ出したくなった日もあるかもしれない
何もするべくもない街がぼんやりと流れていた
褐色と黄土色の魔法館の看板
ほんとうにどこへ向かうのだろうと

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ギザギザになったアーケードの短冊
少し痛かったが
モザイクなのかのようなタイルの歩道を歩いた
言葉もなく誰の願いもなかった
親指で引っかけるようにして

アイポッドへ入れた妙な音楽を
微妙な思いがとぎれそうになった
そして旅行会社の騒がしいパンフレットのはし切れたち

洞穴のような占い館に潜入すると
水晶玉を手にした老婆がひとりで
粗悪な群青色の中に極彩色の光が幾つも灯っていた
そんな誘惑に負けそうな体はお腹が空いていて

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どうすることもできなかった
群青でなく紅の滲んだ虹色かもしれないと
老婆は苦しみに耐えながら修行したのだろう
この体が動くことはなかったけれど
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