違う存在/北村 守通
 
「あの家は『違うひと』だから近づいてはいけない。」

と、何度教えられたことだろう。
私の家だけだったのかもしれないし、そうではないのかもしれない。
けれども、父・母、そして親戚の会話の中でも共通して出てきていたので、これはそれほど限定された空間での話ではなかったのだろう。
『違う人』とはなにか?ということについて知ることができるようになったのは、中学に入って『被差別部落』というものの存在を知るようになってからだった。
 そのことを尋ねると、父や母は決まってこう言ったものだ。

「差別はしてはいけないが、区別はしなければならない。」

どうやら、父や母にとっては差別とは直接的な
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