夏を漕ぐ/千波 一也
 


わたしは
風をおよぐのがすきだから
太陽との相性は
とてもいいのだと
思う

汗ばむ腕と首筋に
水の匂いがたむろして
わたしをいっそう
およがせる



 夏にはもともと
 欲が無い

 はだかのけものが
 勝手にさわいで飾るだけ

 だから、ほら
 けものの寝床と同じ匂いが
 そこいら中にたちこめる

 なんだかとっても
 懐かしげにね



自由には
ぬるめの気温がちょうどいい

ほどよく疎遠な季節を浴びて
わたしを染める
わたしが
聞こえ、




もどかしい
ひかりのなかの答に触れて
わたしはゆらり、と
わたしの分だけ
夏を漕ぐ

どこまでも濃い
匂いのなかで






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