ゆめのむれ。/志賀羽音
 
 抱きしめた白い少女は、ぼくを抱きしめていた。透けるようなその白さは光を吸い込んでいるように輝いている。

(ゆめをみる、)

 遠くで男が処刑されていた。首と胴が分かれてしまった男は黒い液体を滴らせながら濁った眼球で空を見ている。白い少女は分裂した男に近付いて白い手を黒い液体で汚しながら男の首を抱きしめた。男の濁った眼球は瞼の下に隠れている。

(ゆめをみた、)

 抱きしめた白い少女はぼくを見つめていた。ぼくは透けている。霧のように煙のように透けている。
 抱きしめた白い少女はいつの間にかぼくを抱きしめていた。ぼくはどんどん透けている。空気に溶けるように空気に染み込むように透
[次のページ]
戻る   Point(4)