トルネード・トラジェディ/渡 ひろこ
意思がゆっくり着地する
凄まじい憎悪の渦のパレード
周りのものを巻き込み取り込み
放物線の影絵を描く
すでにロック・オンされたわたしは
足が石になって動かない
逃げるすべもなく、あっという間に巻き込まれた
引きちぎられそうな痛み
ヒステリックなテロの渦中では
オーソドックスな言葉も
報復の礫に怯んでしまう
歯を食いしばり目をつぶって耐えているうちに
狂気のエネルギーはことごとく破壊しつくすと
やがて満足したように呆気なく消えてしまった
朽ちた残骸の中に取り残され
茫然と立ちつくすわたしを
すっかり晴れあがった青空が嘲笑う
脅えていたヒヨドリたちは
何事もなかったかのように飛び立ち
無邪気に囀りはじめる
青に隠れて浅く眠る、黒い鍵爪の耳元で
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