痛み/
海 猫
疲れきった八百屋のオヤジと
鼻歌唄いながら颯爽と駆け抜ける青年
煙と不満を吐き出しながら歩く女と
東京の街を桃色に染めた田舎の娘
みんな同じ街で違う恋をした
みんな同じ空気で違う溜め息をつく
カッターに指の皮を連れ去られた夜
起きたら忘れていて
吊革を握った瞬間に
蘇る涙
恋の痛みは誰にもバレない密かな痛み
見かけないネコが私を睨んだ
羨ましくも悲しい瞳で‥
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