夏の終わり /服部 剛
 
「倒れかけた鉄塔」という唄を 
口ずさんで、歩いていた。 

道の傍らに、全身は枯れながら 
太陽の顔を燃やしている 
向日葵達は 
只 
夏空を仰いで 
密かな合唱を、奏でていた。 

横断歩道に落ちていた 
一枚の 
蝉の片羽根が、舞い上がる 

( その頃甲子園ではサヨナラ負けの 
  高校球児等が跪(ひざまず)き、涙の混じった砂を 
  それぞれの袋に、入れていた。     ) 

通り過ぎる車の窓の隙間から聞こえた 
ラジオ中継の校歌斉唱が 
陽炎(かげろう)の向こうへ

遠のいていった 




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