名前を消されて-0.5-/AKiHiCo
呼吸が乱れ悲鳴を上げました
目の前に繰り広げられるヴィジョン
過去を投影した記憶の水底
両手で耳を塞ぎます
零れ落ちる泪に宿る刹那さ
駆け抜ける当時の恐怖
現実との境界線を失くした海馬
乱れる髪は顔を覆いました
数人の大人達が少年を
少年を抑え付けます
金銭関係でまともな治療を施される
事のない少年に名前はありませんでした
縛られた四肢でも尚動かせる肘で
何かを訴えますが届く当てはありません
リスパダール液の沁みてゆく身体
冷たくて呼吸が深く為ってゆきました
陽射しが手の甲を照らします
解決策を見出さない環境は幸せなのです
過去に向かう事で
もう会
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