カラーバット/光井 新
 
る。集中力は十二分。そこへ、
ピッチャー松坂投げました!}


? ?と同じ
  
空振り。バットは狙っていた蝉を捕らえられず、木を擦るヂヂッという音が虚しく響く。
次の瞬間、男の子は、飛んで逃げていった蝉に小便をひっかけられる。

 男の子「あうつっ」
  
男の子はムシャクシャして、何度も何度もカラーバットで木を思いきり叩く。
そのフォームは全身に力が入り過ぎていて、ギクシャクしている。関節という関節は硬く、ロボットのよう。とても松井秀喜には見えない。
掌に湿る汗。バットがすっぽ抜けないように、ガチガチに力一杯握っている。手首は特に硬い。

 男の子「ぼくのば
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