空振り。バットは狙っていた蝉を捕らえられず、木を擦るヂヂッという音が虚しく響く。 次の瞬間、男の子は、飛んで逃げていった蝉に小便をひっかけられる。
男の子はムシャクシャして、何度も何度もカラーバットで木を思いきり叩く。 そのフォームは全身に力が入り過ぎていて、ギクシャクしている。関節という関節は硬く、ロボットのよう。とても松井秀喜には見えない。 掌に湿る汗。バットがすっぽ抜けないように、ガチガチに力一杯握っている。手首は特に硬い。