撃沈。/敬語
 



あぁ。もう海面からの音も届かない。



あぁ、沈んでいく。
沈んでいく。


後悔と失望感が空気と共に肺から飛び出した。
そして、そのまま勢いよく海面を目指して駆け上がっていく。

お願いだ。
僕も海面まで連れて行ってくれ。

僕は井の中に帰りたい。淡水に帰りたいんだ。
もう大海なんかに来たりはしない。
だから、だから。

だが願いは虚しく、彼らは振り返りもせずに駆け上がって行った。


あぁ。もう海面からは何も届きはしない。



あぁ、沈んでいく。
沈んでいく。


鹹水と絶望感だけが残った肺。

光も音もない世界。

そこはまさに大海だった。


そんな中を僕は沈み続けていく。


あぁ。大海には底なんてものはないのかも知れない。
だが、それがどうしたというのだ。

もう鹹水以外何もない僕には関係がない。


だから、

だから、

僕は沈んでいく。




戻る   Point(1)