鯰/番田 
 

誰の声もないままに
手や体に流されていくのは楽しいだろうか
風になり手がかりのある
そこにひとつを中に見つめて



そうすることもなくあり
青の色彩の中に立ち
流れる銀にかかとを上げると
思う人がそこにいるのだと知らされる

水色な水面に無数の水
今日も鯰が一匹いたらしい
立つ甚兵衛川では無数の魚が存在するが
光に数匹の手柄も釣り上げたことはなかった

不可能が走行する頭の外で
人々は他人の可能性を信じず走行する
共存が明快だが偶然な閉塞社会では
不審な他人を全面解放する



全体が現れるのだと思った
ぼんやりと手に考えを巡らせた
きっと手に入れられると座り続けずにいれば
こんなふうに朝に影を見続けている
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