送り火/山崎 風雅
 


 化粧して、ゆかた着た君、凛として
 思わず、からかう
 どこの部屋の力士ですか?
 君、答える
 高砂部屋の十両です と

 太子道の交差点、警官が笛を鳴らすまでの青信号、横断歩道からビルの間に見えた 大の字

 カラカラ鳴る下駄、下駄なるカラカラと

 夏も終わりと、ゆかたの胸元、漂うか色香

 明日の診察、お父さんと行くねん

 あ、そか

 お父さん、一緒にビール飲みたい言うてたけど、みきひろバイクやろ 危ないし
 
 飲みたかったな

 
 円町駅まで着た時は
 人もまばらで
 

 
 壊れそうなほど、もろい思い出だけど
 少女のような君を見つけた送り火の夜

 
 

 
 
 
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