胎盤/ホロウ・シカエルボク
紫色の唇をした
少女が産声を上げる時間
バレンが
巧妙な胎盤に色を馴染ませてゆくその時間
木の屑を集めながら
生命はどこにあるのだと自問していた
朝から雨が長く降り続いて
今ではそこにもう時間の流れというものはなく
肩や、腕や、指先が、ぼんやりとした疲れを感じる頃
少女の産声はくたびれた屋根裏で
惰眠を貪る鼠の耳をヒクつかせるほどに轟いた
ああ
宿酔いの霞みの中にある幻想の余韻を抱きながら
ひたすらにそいつは性器であろうとしたのか
生温かい赤子の
さらに奥にある真理を
その胎盤から生み出そうとしたのか
軒先が濡れてゆく
まるで
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