人ごみという言葉が嫌いだった/木屋 亞万
ら見ることができない
アスファルトが陽光を照り返して肌をひりつかせるだけだ
16日になればすべて元通りになるはずだ
二日酔いの顔で親父は電車に乗り
憂鬱な休み明けの顔をしたOLが化粧をする
不機嫌そうな大学生は耳から蝉のような音を零して
小学生はボックス席を占拠して携帯ゲーム機で通信しあう
誰も帰ってくると約束しなかったけれど
嫌になるくらい無情で陰鬱な日々だったけれど
みんなUターンしてきてくれると信じている
人の消えた街で今も
ずっと誰かを探している
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