ワンダーラスト/山中 烏流
 
いた跡
そこに落ちている景色を拾いながら
先に進んでいく

そういえば
列車には時刻表がなかった
線路は一本きりで
後続も、未だ来ない


いつかの老人は
少し離れたところにある席で
眠っているのか
死んでいるのかが分からないくらい
小さく
呼吸をしていると聞いた
から、
もう一度
その顔を覗きに行ったのだけれど
やはり、私には
あのときの話が思い出されるばかりで
あの景色や
彼の顔つきなんかは
何一つ分からないままで
何一つ
思い出せないままで





そして、
最終列車は来ない


そして、
私は
戻ることができない








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